日々思うこと

マレーシアのロックダウン生活記録|2020年3〜6月のMCOで起きたこと

この記事の位置付け

2020年3月から6月にかけて、私はマレーシアで外出制限のもとに暮らしていました。当時のブログには、その日その日の短い記録が断片的に残っています。この記事は、それらを一本にまとめ直し、後から公的な資料で時系列を照合したものです。

先に用語を整理します。日本語では一般に「ロックダウン」と呼ばれることがありますが、マレーシア政府の正式な呼称は Movement Control Order(MCO、活動制限令)です。在マレーシア日本国大使館も「活動制限令(MCO)」という訳語を使っています。この記事でも、制度を指すときは MCO と書きます。当時の私が「ロックダウン」と書いていた箇所については、その言葉のまま引用します。

MCO のあとには、条件付き活動制限令(CMCO)、回復のための活動制限令(RMCO)と、段階の違う制度が続きます。名前が似ていますが中身は別物なので、この記事では対象期間と正式名称を必ず付けます。

これは2020年当時の記録です。現在の制度、入国条件、配達サービスの使い方を案内する記事ではありません。ここに書いた2020年当時の制限や手続きを、現在の案内として使うことはできません。

書き分けの約束事です。以下では4つを区別します。当時の私が実際に体験したこと当時の私が推測・感想として書いていたこと公的資料で後から確認できた事実、そして今回調べても確認できなかったこと。確認できなかったものは、確認できなかったと書きます。

2020年3〜6月の時系列

まず、公的資料で確認できる骨組みです。マレーシアの制度の動きと、元記事で触れた日本の主な日付を並べています。出典は、在マレーシア日本国大使館が当時公表した各ページと、厚生労働省の資料です。

日付できごと
2020年3月18日MCO 開始。外国人渡航者の入国禁止、学校閉鎖、正当な理由のない外出の禁止など
3月25日公共交通機関の運行時間を 6:00–10:00 と 17:00–22:00 に限定
4月1日MCO 第2段階。規制強化
4月7日日本で緊急事態宣言(7都府県)
4月10日ムヒディン首相の記者会見。MCO を4月28日まで延長
4月16日日本、緊急事態宣言の対象を全国に拡大
4月29日〜5月12日MCO 第4段階として当初示された期間。その途中の5月4日から CMCO が施行
5月1日首相のレイバー・デー演説。5月4日から CMCO へ移行すると発表
5月4日CMCO 開始。大部分の経済・社会活動が条件付きで再開
5月4日日本、緊急事態措置の実施期間を5月31日まで延長
5月10日首相のテレビ演説。CMCO を6月9日まで4週間延長
5月13日官報 P.U.(A) 147/2020 が施行(6月9日まで有効)
5月14日日本、39県で緊急事態宣言を解除
5月21日日本、京都府・大阪府・兵庫県で解除
5月25日日本、残る5都道県で解除。全国で解除
6月7日首相の特別声明。CMCO は6月9日で終了、6月10日から8月31日まで RMCO

この表と、当時の自分の記録を重ねると、書いた日に何が決まっていて何が決まっていなかったかが見えてきます。

MCO下の日常生活

2020年4月2日、私はこう書いています。

4月に入り規制はさらに厳しくなり、スーパーやコンビニの営業時間が短縮され夜8時までの営業。自家用車の使用は午前6時から午後10時まで。公共機関の営業時間は午前6時から午前10時まで、午後5時から午後10時までとなります。

2020年4月、MCO第2段階の運行・営業時間を知らせるMKNのSMS

この数字は、後から公的資料と突き合わせても合っていました。大使館が3月31日に出した「MCO 第2段階の措置のポイント」には、レストランの持ち帰り・スーパー・小店舗・ガソリンスタンドの営業時間が8:00〜20:00、公共交通機関が6:00〜10:00と17:00〜22:00、自家用車・タクシー・e-hailing が6:00〜22:00 と書かれています。私が「夜8時まで」と書いた部分は、正確には「朝8時から夜8時まで」でした。

同じ資料には、当時の私が書いていなかった条件も載っています。自家用車は緊急時を除き運転手1名のみ。門と塀で囲まれた敷地の中であっても、運動やレクリエーションは禁止。この2つは、今読み返すとかなり重い制限です。

取り締まりについても書いていました。「無視すると逮捕ですから、マレーシアに滞在されている方々は十分に気を付けましょう」。これは大げさな表現ではありませんでした。大使館は4月10日の告知で「邦人を含め、活動制限令に違反して不要不急の外出を行ったとして警察に逮捕され、罰金等の刑罰を科されたケースが多発しています」と書いています。

Grab Foodを使った当時の記録

4月6日の記録です。外出が制限されているなかで、食事の調達手段として配達アプリを使っていました。

久々に先ほどGrab Foodを使いましたが、やはり便利で良いですね。マレーシアはロックダウン中ということもあり、プロモーションが結構多い。一部フードの配達料が無料になっているのが嬉しいです。

「Grab Foodというのは、日本のUber Eatsのようなものかな。こちらは使ったことありませんが」とも書いています。使ったことのないサービスに例えているので、これは当時の私の理解であって、両者を比較した記述ではありません。

配達料が無料になっていた、プロモーションが多かった、という部分は当時の私が画面で見たことです。それがどの店舗の、どの期間の、どういう条件のキャンペーンだったのかは、今回調べても確認できませんでした。今回、当時の Grab の公式告知を確認できなかったためです。したがってこの記事では「そういう表示を見た」という以上のことは書きません。

制度の側から補足すると、MCO 第2段階では飲食店の店内営業は認められず、ドライブスルー・持ち帰り・デリバリーによる食料の供給が「特別な場合」として外出の理由に挙げられていました。大使館の資料は奨励事項としてオンラインショッピングと「配達の際は、玄関に置いてもらうなど直接の接触をできるだけ避けること」を挙げています。店内飲食が認められないなか、デリバリーは、持ち帰りやドライブスルーと並ぶ食事の調達手段の一つでした。

移動制限とAirAsiaへの問い合わせ

4月9日、予約していた便についてエアアジアから回答が来ました。当時の記録です。

10月31日までの日程で無償フライト変更かクレジットアカウントの払い戻しが出来るらしいので、クレジットアカウントの発行をお願いしました。返答まで一カ月くらいかかるかと思っていましたが、意外と早かった。

私はクレジットアカウントを選び、有効期限は365日と説明された、と書いています。さらに、その航空券は前回のクレジットアカウント払い戻し分を一部使って買ったものだったので、「払い戻されたものをさらに払い戻される形になる」とも書いていました。

ここは慎重に書きます。2020年4月時点のマレーシア向けにエアアジアが提示していた条件、とりわけ「365日」という有効期限を、今回、当時のエアアジア公式資料で確認することはできませんでした。当時の公式告知ページを確認できなかったためです。上に書いたのは、私が受け取った回答の内容をそのまま記録したものであり、公式条件として保証できるものではありません。

この日の記録には、もうひとつ書き添えていました。「一応、4月14日にマレーシアのロックダウンが解除される予定ではありますが、感染者も毎日増えているのでロックダウン延長も覚悟しておく必要がありそうですね」。

この時点で4月14日という予定は正しく、延長を覚悟するという判断も当たっていました。ムヒディン首相が4月28日までの延長を発表したのは、その翌日、4月10日の記者会見です。

隣接する記録から残しておきたいこと

5月2日:CMCOへの移行

5月2日の記録は、大半が前日のムヒディン首相演説の要約でした。当時の私は大使館の告知ページを引用しています。制度の中身はこの記事の時系列の表と出典に譲ります。

本人の言葉として残しておきたいのは最後の数行です。「MCO解除は5月12日の予定でしたが一応4日から解除になるようですね。解除といってもまだ規制が数多くあるので完全なるMCO解除とはならないようです。週一で通いたいタイ式マッサージ屋も規制対象となっているので残念。しばらく巣篭もり生活が続きそうです」。

「解除」という言葉が使われても、生活の実感としては続いている。その感覚は、公的資料の日付だけを並べても出てきません。

5月15日:三ヶ月ぶりのコーヒー

この日の記録が、いちばん当時の空気を残していると思います。

久々にスタバ来ました。三ヶ月ぶりのスタバコーヒーはやはり美味しいです。自宅ではインスタントコーヒーばかりだったので久々に新鮮さを感じています。

そして、「今年に入ってから日本人2人くらいとしか会話してないな。外国人とは雰囲気で沢山会話出来てると思ってるが」。

この日、私は「今月12日から行動制限が少し緩和された」と書いています。この「12日」という日付は、今回の調査では公的資料と一致させられませんでした。連邦レベルでは CMCO は5月4日開始で、5月13日から新しい官報規則 P.U.(A) 147/2020 が有効になっています。州ごとに施行時期が違っていたことは大使館も注意喚起していましたが、私が住んでいた地域について「5月12日」を裏づける資料は見つかりませんでした。日付は当時の私の記憶として、そのまま残します。

同じ日に「日本では多くの地域で緊急事態宣言が解除されたみたいですね」とも書いています。これは前日の5月14日、39県で解除された件を指しています。

6月6日:CMCOの先を読もうとしていた

6月6日、私は前日の首相会見を見て、こう推測しています。「個人的な見解としては一部規制条件付きでCMCOを解除し、マレーシア入国に対する規制を少しずつ緩和させていく方向だと推測します」。

翌6月7日、首相は特別声明で CMCO を6月9日で終了し、6月10日から8月31日まで RMCO を施行すると発表しました。州をまたぐ移動や国内旅行が新たに許可される一方で、マレーシア人の国外渡航は引き続き禁止されています。国内の緩和という方向は当たっていましたが、私が期待していた「入国規制の緩和」の部分は、この発表には含まれていませんでした。

この日の記録には、他州からサバ州へ入る際の検査に関する話も書いていました。これは当時読んだ現地紙の記事を要約したもので、今回、公的な一次資料では確認できませんでした。制度として書ける材料がないので、この記事では扱いません。

当時感じていたことと、後から確認できた事実

読み返して、いくつか気づいたことがあります。

ひとつは、公的資料と一致した記録が複数あったということ。4月2日に書いた規制時間、4月14日という予定日、4月6日の「明日から日本各地で緊急事態宣言」。ここに挙げた3点は公的資料と合っていました。目の前で運用されている制限は、生活者としてはかなり具体的に把握できるものだったのだと思います。

もうひとつは、制度の意味づけになると、とたんに曖昧になっていたということ。4月6日の記録で、当時の私は「本気でコロナ拡大を封じるためには海外のようなロックダウンが必要なのかもしれないと個人的には思います」と書いています。これは何かを検証したうえでの意見ではなく、目の前の状況を見た印象です。制限の効果について私が判断できる材料は持っていませんでした。当時の感想として残しますが、主張として読まれるべきものではありません。

三つめは、先の予定が短い間隔で変わっていたということ。4月9日に「4月14日に解除される予定」と書いた翌日に延長が発表され、6月6日に「たぶんこう動く」と書いた翌日に RMCO が発表されている。当時の記録が数日単位で古くなっていくのは、私の見通しが甘かったからというより、決定そのものが数日単位で出ていたからです。

そして、確認できなかったことが確認できたことと同じくらいあります。Grab のキャンペーン条件、エアアジアの2020年4月時点のマレーシアでの条件、5月12日という緩和の日付。当時は目の前にあった情報でも、6年後の今回、公式情報を確認できないものがありました。自分の記録に日付と一次情報へのリンクを残しておくことの意味を、今回あらためて感じました。

この記事は現在の制度案内ではありません

繰り返しになりますが、ここに書いた制限も手続きも、2020年当時のものです。この記事で扱う2020年の MCO、CMCO、RMCO はいずれも終了しています。

  • 現在のマレーシアの入国条件を調べたい方は、外務省の海外安全ホームページと在マレーシア日本国大使館の最新の告知を確認してください
  • Grab やエアアジアの現在の料金・規約・払い戻し条件は、各社の公式サイトで確認してください。この記事では現在の条件との比較は行っていません
  • この記事に出てくる金額・期限・手続きを、現在の判断材料に使わないでください

元になった6記事

この記事は、2020年に書いた次の6本をまとめ直したものです。当時の短い記録そのものは、公開日のまま残してあります。

出典

本文中の制度・日付に関する記述は、上記の公的資料で確認したものです。それ以外は当時の私の記録と、そこから今考えたことです。確認できなかったことは、確認できなかったと本文に書いています。

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